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先生

暦のうえでは冬となりましたが、ここ数日は穏やかな小春日和が続いております。
これから寒さに向かいますので、どうぞお健やかにお過ごしください。
 

さて、先月号で第3号被保険者(いわゆる扶養範囲)が、配偶者である第2号被保険者の組合に「タダ乗り」する形となっていて、特に費用を払わずに健康保険や年金を享受できること、そのために収入や働き方による不公平感を生じていることをお話ししました。高度成長時代にできたこの制度は専業主婦の保険未加入を救済するという目的で始まりましたが、時を経て女性の就労増加や少子高齢化による保険の原資不足によって割りに合わない制度となってきています。これに関連して岸田総理と厚労省から先月「年収の壁・支援強化パッケージ」が発表されました。
https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20230926b.html

今回はこの政策について思うことを書いていきます。

 

まず最初に、今やテレビで130万円の壁と言って大騒ぎですが、大企業ではすでにこの障壁が下がっており「106万円の壁」となっているのをご存知でしょうか?実は2016年から社会保険料の適応拡大という名目のもとに従業員501名以上の企業に対して扶養の限度額が減額されていたのです。この適応拡大は最近になり加速的に進んでいます。2022年10月からは従業員101名以上の企業に、そして2024年10月以降はさらに適用範囲が拡大されて、従業員数51名以上の企業も対象になります。
この時点になると実質かなりの企業が「106万円の壁」状態になると思われます。今後、従業員が少ない企業へも拡大は必須であり、このようにパッケージ云々の裏では、扶養範囲縮小の政策が粛々と進んでいるのです。今回は2年間の時限措置として、壁を超えた分は助成金で補填されるか、もしくは企業が証明することで扶養にとどまることができるようになるとのことです。でも原資不足の社会保険がこの制度を恒久的に容認することはまず考えられません。長い目でみれば扶養制度の廃止が見えてくると思います。

 

また今回こっそりと支援強化パッケージに含まれていたものに「配偶者手当廃止の促進」があります。給与をなかなか下げることができない企業もあまり文句を言いません。この件で割りを一番食うのは取れるはずのものが取れなくなる保険組合ですが、これもあまり文句を聞きません。勿論推論ですが、将来の厳しい政策のバーターとしての緩和政策案である気がします。このように、企業、保険組合に対して貸し借りを重ねながら、巧妙に社会保険料をかすめ取っていく構図がありありです。ただほかに代わる原資もないことからなかなか議論にもなりずらいでしょう。しばらくはこのように広く浅い「かくれ増税」が増えていくものと思います。

 

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理事長 生野 恭司
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