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先生

どんどん強くなる日差しに夏の訪れを感じる今日この頃、皆様におかれましてもお健やかにお過ごしのことと存じます。
蒸し暑い日が続いておりますが、お身体ご自愛下さい。

 

さて、6月になり、令和6年度の診療報酬改定がいよいよ実施されました。引き続き、ほとんどの薬価の引き下げや技術料の見直しが行われました。どれが上がったか下がったかという改定はさておき、私は今回1つの点に注目したいと思います。


それは今回新設された「ベースアップ評価料(以下、評価料)」です。医療従事者の人材確保や賃上げに向けた取り組みの一つとして新設されました。2024年度に+2.5%、2025年度に+2%のベースアップを行うための特例的な対応で、賃金改善を行っている医療機関で算定が可能です。初診料は+6点、再診料は+2点と賃金増加を評価料で賄うことは到底無理ですが、私はこの項目が今までにない大きな転換点になりうると考えています。

 

日本の医療保険制度は、国民皆保険、フリーアクセス、現物給付などの特徴が挙げられます。このうちフリーアクセスをより容易にするために、同一手技、同一料金の仕組みがとられています。同じ手技・検査を受ければ日本全国どこでも同じ値段というのが大原則です。勿論、受ける施設によって値段が異なることは今までもありましたが、施設規模や看護体制の違いを除き、例えば同じようなクリニックで診療を受ける限り同じ値段であることは当たり前でした。この評価料により、受診する医療機関により(たとえ同じような施設を受診したとしても)値段が変わることになります。このように施設により値段が変わることを容認し始めたというのが一つの点です。

 

もう一つは持続性です。今まで厚労省側の思惑により多くの点数が誘導的に新設され、その後引き下げ、消滅というのが繰り返されてきました。「初期投資を回収したらサービスは終わりですよ」というある意味ドライなメッセージなのですが、人件費の場合はそう簡単にはいきません。日本では、ご存知のとおり、上げた賃金を下げるのはかなり障害が大きいため、今後の評価料の減額、消滅に従ってどのように賃金を取り扱うのか、労務法規も鑑みると難しいところです。

 

今後減ってゆく国民保険の原資を考えると、安易にこの流れに乗るのはリスクが高いと取る方も多いでしょう。機械購入のように初期投資で終わるものではない賃上げについて、持続性が疑問視される診療報酬でどう賄うのか、今後の報酬に注目したいと思います。

 

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医療法人恭青会

理事長 生野 恭司
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